ダーデンの死んだ牛の肉ブログ

シドニー生まれの日本男児

バランス・オブ・パワーの世界へ

ごきげんよう、ダーデンです。

20世紀における国家を超越した何らかの枠組みによる安定した世界秩序の形成という幻想が最終的に崩れつつある。これは、ヴェストファーレン体制以来の主権国家体制の復活ではなかろうか。結局のところ、国の枠というもは簡単に超えられないのだよ。第二次世界大戦後の自由主義諸国なるもののリーダーとして国境を越えた秩序を作ろうという姿勢を示してきたアメリカがこれを受け入れたのだ。

アメリカは我々の予想以上に衰退、没落していたのだ。トランプ新政権誕生について、反グローバリズムの潮流やポピュリズムの台頭であるといった捉え方がなされている。良い悪いの価値判断を抜きにして考えれば、トランプ新政権の性格と開発独裁の性格が似ているのではないだろうか。開発独裁というのは、途上国でよく見られる現象である。国が発展して繁栄するということを正当性のベースにする代わりに、政府に対して権威主義的なリーダーシップを持たせることである。つまり、既存のエスタブリッシュメントをぶっ壊すということなのだ。反対勢力に対しては強硬に対応する。

トランプ大統領は大統領選に出馬する前に、2014年のフォックス・ニュースのインタビューでこう答えた。「アメリカを救う道は何か。それは、経済が壊滅的に悪くなり、国中が地獄と化すならば、暴動を起こしてでも実力行使をしてでも、もう一度国が元に戻ろうとするはずだ。その時にアメリカは救われるのだ。」

トランプ新政権の首席補佐官であるスティーブン・バノン氏はこう答えた。「私はレーニン主義者だ。レーニンというのは、これまでの国の在り方をぶち壊したろ?私はこれをやりたいのだ。既存のエスタブリッシュメントをぶち壊したい。」

トランプ新政権は完全に開発独裁とまでは言わないが、持てる1%、つまり既存のエスタブリッシュメントが外国とつるんでアメリカを悪くしたと徹底批判している。アメリカ国内の労働者たちがさんざん割を食い大変な思いをしてきたのだ。それをトランプ新政権は変えようとしている。まともな反トランプ派は、同族支配、政界と経済界が癒着することによる利権構造の悪化、政治家が私服を肥やす危険性、国内の情報統制、国民の自由と権利の制限、アメリカを偉大にすると言いつつ国民が貧困化する危険性を叫んでいる。これは、権威主義型政権の弊害と一致するのだ。つまり、なぜトランプ新政権が支持されたのかだ。これは、実はアメリカは内実途上国化していることを表しているのではなかろうか。

権威主義政権がアピールするというのは国民がかなり疲弊しているときである。実際に、FRBが2013年からアメリカ国民の経済状態について調査したデータによるとアメリカ人の半数が400ドル(1ドル115円のレート計算で46,000円)の現金が必要になったときに、用意できない、あるいは借金するしかないと答えた人の割合が47%いることが明らかになった。ニューヨークの個人資産運用サイトのバークレイトが2014年に行った調査では、1000ドルかかる病院の救急医療が貯金で負担できる人の割合が38%、500ドルかかる車の修理が貯金で負担できる人の割合が同じく38%であった。ジョージワシントン大学オックスフォード大学プリンストン大学の合同調査によると突然の出費に対応するために1ヵ月間で2000ドル用意できるか調査したことろ、無理と答えた人の割合が25%、質屋に物を売るか、給与の前借をするしかないと答えた人の割合が19%、占めて44%である。

これらが意味するのはアメリカ国民の半数近くは、実質その日暮らしであるということだ。何か大きな出費があった場合に破産しかねない状況なのである。アメリカというのは、東西両沿岸部の都市部は繫栄しているが、そこに挟まれた地域、つまり、本当のアメリカがトランプ大統領を支持したのだ。この本当のアメリカが予想以上に疲弊していたのである。半ば途上国化していたと言っても過言ではない。だからこそ強いリーダーシップを持ったこれまでの既存のエスタブリッシュメントをぶち壊してくれるであろうトランプ大統領が誕生したのである。

しかし、日本は第二次世界大戦後ずっとアメリカに従属してきたのは事実だ。もはや日本はアメリカという「途上国」に従属してしまっている。アメリカと価値観を共有していれば、「win‐win」の関係になって日米同盟を基軸にしてアメリカについていけば大丈夫などとほざく能天気な時代は終わったのだよ。アメリカの内実が途上国化している状況を強力なリーダーシップを持った権威主義的な政権によってどうにか収拾しなければいけないところまできているとすれば、それは中国やロシアと内情は似ている。日本はかろうじて先進国としての体面を保っているとしても(日本も内実は衰退の一途をたどっているが)、米中露が途上国化すれば日本も引きずり込まれる。日本はジャパン・ファーストに本気で舵を切らなければ共倒れになることは間違いないのだ。