ダーデンの死んだ牛の肉ブログ

シドニー生まれの日本男児

トランプと花札を

ごきげんよう、ダーデンです。

11月8日に行われた米大統領選の結果は議会選も共和党の圧勝で不動産王ドナルド・トランプ氏が勝利を手にしました。トランプ大統領の誕生です。こんなに興奮した大統領選は初めてでした。トランプ氏は遂にアメリカも手に入れてしまったのです。まさしく成り上がりのアメリカン・ドリームを体現する男ですね。一方、民主党の宇宙人、あっ、ヒラリー・クリントン氏は過半数に及ばず敗北です。完全に予想を裏切る形の結果となりました。市場関係者もまさか!と思ったことでしょう。その日はダウも一時700ポイント以上下げ、円高ドル安が進みました。日経平均も一時1000円以上下落しました。評論家もマスメディアも支援者たちも誰も予測できなかったトランプ氏の逆転勝利に慌てふためいたわけです。

アメリカは50の州からなる広大な国土を持つ超大国です。そして覇権国家としてい世界をけん引し続け「世界の警察」として自負してきました。アメリカは様々な人種が暮らす移民国家でもあります。そのアメリカが揺れ動いているのです。本当のアメリカを知りたければ田舎に行けば分かると言われます。ニューヨークのタイムズスクエアやサンフランシスコ、ラスベガスなどの観光地はアメリカではありません。田舎に行けば本当のアメリカを見ることができます。今回トランプ氏が勝利を手にすることができたのは、その田舎に住む「普通」のアメリカ人の票だったのです。隠れトランプ票とされるアメリカ国民の本音の一票だったのです。

映画監督のマイケル・ムーア氏は2016年10月21日にオハイオ州ウィルミントンで行われた試写会でこんなことを言っていました。「デトロイトで財界の会合に出席したトランプがフォードの役員たちを前に、もしメキシコへの工場の移転を進めたら、逆輸入される車には35%の関税をかけてやる。そうすれば誰もフォード車など買わないぞと脅しをかけた。驚くべき発言だった。これまでそんなことを言える政治家は民主党にも共和党にも一人もいなかった。その言葉はミシガンやオハイオペンシルバニアの人々の耳には心地よい歌声のようだった。トランプは人々の苦しみに訴えかけている。そして中間層から追い落とされた人々の多くがトランプを支持している。彼らはトランプのような人間爆弾が現れるのを待ち望んでいたのだ。自分たちを隅に追いやった社会に対して爆弾を投げつける時がくるのを待っていた。選挙の日、失業し、家を追い出され、家族にも見捨てられ、車も持っていかれ、何年も休むことさせ許されず、最低の医療しか受けられず、すべてを失った人々の手にたった一つ残ったものは、1セントもかからないが憲法で保障された投票する権利だ。彼らは一文無しで家もなく繰り返し踏みつけられてきた。しかし、投票日にはそのすべてに対する仕返しができる。億万長者も失業者も同じ一票しか持ってない。そして中間層からの脱落者の数は億万長者より遥かに多い。すべてを失った人々が投票所に現れ投票用紙を受け取り、投票箱の前で、彼らの人生を破滅に追い込んだシステムのすべてをひっくり返すことを約束している候補者の名前にチェックを入れる。それが、ドナルド・J・トランプだ。トランプの勝利は史上最大の“FUCK YOU”になるだろう。」

アメリカのエスタブリッシュメントも変化しているのです。ベルサイユ条約の失敗で学んだように第二次世界大戦の後に日本を痛めつければ否定的な感情を抱いた人間たちが何を支持するようになるかわからないので、天皇制を残してアメリカは温情的な国だとイメージづけたように、これはアメリカ国内の状況にも言えることです。グローバリズムへの反発をクリントン氏もトランプ氏も意識していた。だが、トランプ氏の方が直接的で本音を代弁してくれたのです。彼の戦略は大当たりです。

イギリスのEU離脱も「ブリテン・ファースト」だった。もともとグローバル化が始まったアメリカ、イギリスで反グローバル化の流れが起こっている事実に目を向けなければならないのです。アメリカの大統領はもう戦争でアメリカ国民を殺せないという前提がある。イラク戦争で何千人もの若い命が失われた。もう俺たちやんなっちゃったよ!と叫ぶように、超大国アメリカは、今や「世界の警察」を降りようとしています。

アメリカから遥か遠く離れた地で、莫大な軍事予算を費やしてまで「世界の警察」を続けるのはもう嫌なんでしょう。2007年のリーマン・ショックからまだ完全に立ち直れていない。国の財政も圧迫し、アメリカは定期的に軍需産業による武器の在庫処分セールのために、民主主義の正義の名の元という建て前で、自ら作り出した世界秩序を自ら破壊するマッチポンプのように戦争をしまくり、傷だらけになりながら疲弊してきました。もう自国のことで精いっぱいになったのです。アメリカは、そもそも戦前は「世界の警察」などやる気のない国だったではないか。アメリカは定期的にモンロー主義に向かう時期があり、イラク戦争後がその時期なんだと思います。トランプ氏も「アメリカ・ファースト」を掲げ、その流れに乗っていると見えます。うまく操られてトランプ大統領に心変りがなければの話だが。

ここでトランプ氏のマニフェストを見てみましょう。
移民の制限
・メキシコ国境に壁
イスラム教徒の入国禁止
・難民受け入れの制限
・不法移民の強制退去
外交
・対中強硬政策
・対露宥和政策
・対日、対韓防衛負担の増額
その他
・対富裕層課税の強化
・TPP反対、NAFTA廃止
大麻合法化
・対企業課税の強化
相続税の禁止
低所得者層の所得税廃止
・利益団体への寄付税制の強化
・関税の大幅強化

正しいか正しくないかという軸と、不快か痛快かという軸が対抗していて、昨今のアメリカをはじめとする先進国の一部は、正しくなくても痛快だという思いが、正しくても不快だという一群よりも強い力をもっています。密度で言えば、正しいか正しくないかを別として痛快な方を支持したいという思いが強くなっているわけです。トランプ氏を大統領にさせたくないから投票所に行く、クリントン氏を大統領にさせたくないから投票所に行くというさせたくない方の思いがが有利に働いているのです。

もはやアメリカに留まらず、世界はリベラル対保守の構図ではないのです。国家主義自由主義市場原理主義、さまざま前提を覆すようなでき事が起こっているのです。そこに政治への失望と不満が織り交ざる。エリートたちは予測できなかった。トランプ氏が人種差別発言をしようとも性差別的発言をしようともトランプ氏が傷ついたアメリカを取り戻す「Make America Great Again」のインパクトが強烈に突き刺さったのです。ポリティカルコレクトネスは二の次にして、目の前で傷ついたアメリカ国民を見事に釣ったのです。これはグローバル化が進めば世界で起こる現象です。格差や貧困が拡大すれば、その上にいるいわゆるエリートからも余裕が失われていきます。社会がグローバル化によって流動的になれば競争主義が進みエリートたちもいつ転落するか分からない、という不安と恐怖と鬱屈を抱え込みます。

日本はどうすべきか。日本はアメリカの“属国”であるにも関わらず日本を民主主義だと信じ込む連中が左翼と言われ、冷戦体制終焉後も対米追従が愛国だと信じ込む連中が右翼と呼ばれるという具合に、戦後は右も左も概念が混乱しています。トランプ大統領の誕生で日本は大変なことになる!と叫んでいる評論家や専門家もいますが、俺は日本にとって恰好のチャンスがやってきたと捉えています。特に防衛についてです。トランプ氏が「てめえの国はてめえで守れ!」と言うように自国は自国で守るのが普通の国です。

日本は「軽武装×対米依存」です。いざとなればアメリカに守ってもらうんだ!というアメリカを頼る図式です。日米安保条約は日本が攻撃された場合のアメリカの出撃義務を規定していません。しかもいざとなればアメリカに守ってもらえると足元を見られ、莫大な思いやり予算を払ったり、日米地位協定や密約が示すような日本の国家主権の制約に甘んじ続けるばかりです。今こそ「重武装×対米中立化」を目指すべきだと思います。ここでは詳しく書きませんが、日本はもうパパからいい加減に自立しなければなりません。責任ある安全保障政策を、経済秩序を、自分で考えて、自分の足でちゃんと立って、日本にとってあたりまえのことをあたりまえにやればいいだけなのです。